週刊アクセス
 
 
平成17年3月2日 第251号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
天満橋の松坂屋跡、専門店ビルで5月開業
──京阪、家電・家具店を核に誘致
JR大阪駅の仮駅舎が開業――飲食、物販店が入居
業種・業態の市場規模から不動産の価格を求める?
 
     
天満橋の松坂屋跡、専門店ビルで5月開業──京阪、家電・家具店を核に誘致
  (日経ネット関西版 H17.3.1)  
   京阪電気鉄道は28日、大阪・天満橋にある松坂屋大阪店跡地を専門店ビルとして5月27日に再開業すると発表した。大阪地区では梅田と心斎橋・難波の2大繁華街に商業集積が進み、商業地間の競争が激化している。立地面で不利な天満橋は広域から集客する百貨店の業態が成り立ちにくいため、都心部に居住する地域住民の来店頻度を高めた専門店を集め、生き残りを図る。
 専門店ビルは京阪シティモール(愛称「シティモ」)と名付ける。売り場面積は3万2000平方メートル。地下では食料品売り場「デリスタ」が既に営業しており、3月1日に大型書店の「ジュンク堂」、音楽ソフト販売の「HMV」、4月上旬には「青山フラワーマーケット」が先行開業する。核テナントには集客力の強い家電店や家具店などの誘致活動を進めている。
 5月の全館開業までに60億円を投じて内装工事や外壁の塗装を済ませ、駐輪場を設置する予定だ。屋上には夜景や大川の流れが楽しめる展望レストランを設け、近隣住民や通勤客の取り込みを狙う。
 年間売上高は160億円を想定している。昨年5月に閉店した旧松坂屋の2004年2月期の売上高は228億円だった。旧松坂屋は1966年に天満橋で開業して以来、一度も黒字を計上したことがなかった。「百貨店とは違い、少人数でビルを運営・管理する体制に改めれば利益が出る」(佐藤茂雄社長)とみており、開業2年目での黒字化を目指す。
 京阪電鉄の流通事業の売上高は04年3月期の実績で885億円。天満橋での商業施設運営で流通事業を拡大し、鉄道利用者の減少にも歯止めを掛けたい考えだ。

いわせてんか! 〜その1〜

 大阪市内では、特に梅田周辺への商業施設の集積が加速してきている。旧松坂屋大阪店と同様の立地条件にあった三越は梅田へ移転し、跡地には高層のマンションが立地することとなった。そういった中では、天満橋という不利な立地条件で開業に至った、この「京阪シティモール」は異色の存在だ。
 これまで、旧松坂屋(百貨店という業態)とは異なる「次世代型専門店ビル」(都心立地のデイリー型商業集積)として計画をすすめてきていた。いよいよ、開業が迫ってきたわけだが、リニューアルといっても、印象としては地味な感じがする。
 大阪市内へのマンション立地が加速したことによる居住人口の増加。背後地の変化を捉えた「都心立地のデイリー型商業施設」として、これまでの百貨店業態から、そのスタンスを変えたとはいうものの、今回発表している店舗の各階の構成内容(京阪シティモール(愛称:シティモ)5月27日全館オープン(京阪電気鉄道発表)参照)などからは、はっきりとした差は、まだ、見出せないように思える。この辺りが、リニューアルに当たっての新鮮さを感じにくい理由か。(その業態は異なるものの、最近、大丸や阪急百貨店の大幅な増床のニュースが見られたせいかもしれないが)
 現時点では差が見えにくい状態にあるが、旧松坂屋では成しえなかった黒字化を図るためには、立地面での差異を補完するような店舗構成や運営が見られるはずであり、最終的な店舗構成や開業後の運営など、梅田周辺等の商業集積や、従前の百貨店としての業態と比べ、今後、具体的にどういった相違点が見られるか興味深いところだ。

 〜その2〜

 都市型ショッピングセンター「京阪シティモール」の構成は、屋上ダイニング庭園、レストランフロアの吹き抜けに流れ落ちる滝、フラワーショップと水と緑のオアシス空間が充実し、さらに各階にカフェ、デパ地下ふうフードマーケット「デリスタ」、専門店「ジュンク堂」「HMV」、レディスを中心とするファッション、雑貨・インテリアショップのほか「ミドリ電化」も誘致調整中、と都心でおしゃれに生活するサポートをしてくれるらしい。
 メーンターゲットは「都心生活者」=“都心で働く人“ ”都心で暮らす人”。府庁や官公庁の並ぶ天満橋地区であるが、天満橋のほか北浜・中之島・弊社の所在する西天満近辺で都心型高層マンション供給ラッシュを目の当たりにしていると、昨今、当エリアの都心生活者は、働く人から暮らす人へ、その主流が移る過程にあるように思う。ひと言で‘都心で暮らす人’といっても、世代も家族構成も生活パターンも一様ではない人たちの、多種多様多彩なニーズにどう応え顧客を取り込んでいくのかが注目される。

 〜その3〜

 記事にもあるとおり、昨今の大阪の商業ゾーンはキタ(JR大阪駅周辺)とミナミ(難波駅周辺)で2極化し、それぞれ「面」を形成している。  キタでは大阪駅を中心に駅南東に阪急・阪神百貨店、南西には最近オープンしたヒルトンイーストやハービスエント。また北側にヨドバシカメラやロフト、あるいはリッツやヒルトン等のホテルや地下街。他にも曽根崎新地の歓楽街などが密集している。
 一方、ミナミは大丸、高島屋の間に心斎橋筋や道頓堀界隈のアミューズメント施設が軒を連ね、阿倍野の近鉄グループの「HOOP」、難波の「なんばパークス」。御堂筋を中心にアメリカ村、東周辺にカナダ村、そして南船場4丁目にヨーロッパ村と面を広げ、銀杏並木の通りにはヴィトンやシャネルといった高級ブランドショップが軒を並べている。
 それとは反面、北浜の三越や上本町の近鉄百貨店と同様、この松坂屋大阪店(天満橋)は「面」というよりは「点」という位置付けとなるだろう。そのため集客力をより高めるためには、「インパクトのある点」となるとともに「面」への展開を図っていくことが大切である。
松坂屋大阪店のあったこのビルは京阪電車:天満橋と直結しており、2008年度完成予定の中之島新線(天満橋〜玉江橋を結ぶ延長2.9km)の起点駅にもなることから注目されているところである。(京阪電鉄関連HP
 「面」への展開手段として、中之島新線開通は大阪城や中之島公園圏を巻き込むことが可能で、中之島と天満橋の点を結ぶ「直線」的な新たな集客線を描いてくれることだろう。松坂屋北側から大阪キャッスルホテルにかけて飾られている「天満橋錦絵通り」の錦絵パネルのように、かつての賑わいを取り戻してもらいたいものである。

 
 
JR大阪駅の仮駅舎が開業――飲食、物販店が入居
  (日経 H17.3.2)  
   旅客西日本鉄道(JR)西日本が改良工事を進める大阪駅で1日、飲食店や物販店が入居する仮駅舎が開業した。JR西日本は、バスとタクシー乗り場になっている駅前広場の上空を利用して店舗施設「フローコート」を建設した。仮駅舎は北ビルが完成する2011年まで使用する。
 商業施設の店舗面積は2300m2で、投資額は5億5000万円。

いわせてんか! 梅田の地下街から階段を上って「外へ」出たはずが、いつの間にかバスターミナルの上に建物ができていた。飲食店などが十数店入居していた。
 大阪駅前に限らず主要な駅には駅前広場とバスターミナルがあり、これまで特に何も考えたことがなかったが、一等地であるにもかかわらず平面利用しかされていないのは確かに非効率的である。既存のバスターミナルはそのまま残して、上にピロティタイプの店舗などを設ければ家賃収入も見込めるし、バス乗客は雨風をしのげるという利点もある。
 実際には、敷地の所有者が市なのか鉄道会社なのか道路であるのか、法令上の規制は?といったことや、景観上の問題等もあるが、固定概念にとらわれない土地の有効利用という意味で大阪駅前のケースは目から鱗である。

 
 
業種・業態の市場規模から不動産の価格を求める?
   
 
いわせてんか! 表題のようなことが、果たして可能か?
 近時の不動産鑑定では、収益還元法が重視されることが以前より多く、その要素である「総収益」「総費用」「純収益」「利回り」をどのように求めるかが問題となる。
 ここ何週か『減損』を取り上げ、その中で企業独自の「使用価値」と、市場価格である「正味売却価格の時価」の比較で、対象となる事業用の固定資産の収益価格を求めるベースとして、今の企業独自のオペレーションか、業界標準のそれかということを考えた。
 さて。業界標準のオペレーションというと、決算データの財務比率などの平均値が考えられる。中小企業などであれば、TKCの「BAST」や、中小企業庁の「中小企業の経営指標」などが挙げられるだろう。「黒字企業平均」「全企業平均」や、資本金・資産・負債総額・従業員数などの規模セグメント別に、平均的割合などが年次で発表される。
 この割合や比率は、例えば売上高比率などがある。賃貸でも「経費率」などは非常に大きい目安となる。事業であれば、売上高に対する営業利益(償却前)などが、有効だろう。この業界平均比率を押さえておくことは重要となる。
 そこで話を戻して減損だが、ある業界の市場規模から、この売上高を出すことが可能だろうか? たとえば小売業の場合なら、非常に大雑把な話だが、市場規模を店舗数で割れば単純に1店舗あたりの総売上が出てくる。これを標準として、個別の事例たる店舗の売上高営業利益率を比較してゆけば、還元すべき純収益の一定の基準ができる。しかし、黒字もあれば赤字もある。なにで差が出ているのか、また、どれを標準とするか?
 流行の“勝ち組・負け組”ではないが、今、売上シェアの争奪戦、コスト削減競争は苛烈である。それゆえ、将来の収益シナリオを描くとき、この競争をどう読むかは非常に重要だ。となると、ある程度安定したシナリオを考えられるぐらいの市場状況であることが前提となろう。逆に“明日をも知れぬ業界”(市場全体であれ、トップ争いであれ)なら、下手に標準を設けること自体、不合理であるかもしれない。
 つまるところ、不動産の価値を出すとき、現在使用されている業種・業態の市場が不安定であると判断されるなら、市場での賃貸想定がより合理的ということになる。時価を求める場合は『誰が借りるか?』をベースに収益価格を考える必要があろう。

 
 
 
 
 
 
 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

  ―平成17年3月2日号・完―  
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