週刊アクセス
 
 
平成14年11月6日 第132号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
リフォーム、給水管工事の訪問販売でトラブルが急増
赤れんが公会堂リニューアルオープン
不動産投信が人気 〜高い利回り評価、税制改革追い風〜
モンテカルロDCF法のソフトと鑑定評価
 
     
リフォーム、給水管工事の訪問販売でトラブルが急増
  (ISIZE住宅情報News  2002・10・9号)  
   国民生活センターによると、97年度〜2001年度に寄せられた住宅のリフォーム工事に関する苦情のうち、訪問販売によるものが76.7%に当たる2万8779件に達した。苦情件数はこのところ増え続けているが、訪販リフォームの割合は77%前後でほぼ変わらない。
 訪販リフォームの苦情を契約当事者の年代別にみると、60歳以上が51.7%と半数を超え、80歳以上だけでも7.7%だった。高齢者をターゲットにする悪質商法が目立ち、高齢化社会の進展で今後も被害の増加が懸念されるという。
 トラブルの内容では、販売員が屋根や外壁の点検を装って来訪する「点検商法」や、風呂の次はトイレ、その後は屋根といったように次々とリフォームを進められる「次々販売」が目立つ。また、最初に訪問した日に契約させられるケースが多く、クーリング・オフの説明もないなどトラブルになりやすいようだ。
 こうした訪販リフォームでのトラブルを避けるための対策として、「訪問販売ではできるだけ契約しないこと」「複数の会社から見積もりを取るなど、時間をかけて十分に検討すること」「必ず改修計画図(書)、工程表の提出を求める」などが挙げられるという。また、訪問販売の場合は工事開始後でもクーリング・オフ期間内なら解約できることや、契約どおりの工事がされているかを確認するまでは代金を全部支払わないことなども知っておいたほうがいいだろう。
 このほか、最近は給水管の清掃に関するトラブルも増えている。苦情件数は97年度から2001年度までで合わせて93件だったが、今年4月から3カ月間だけで140件にのぼった。典型的なのは「給水管の点検に来ました」などと言って一戸建てを訪問して強引に清掃作業を行い、当初の説明より高額な作業代金を請求するというものだ。給水管の清掃はクーリング・オフの対象にならない点も被害を拡大する要因とされる。
 トラブル防止策として同センターでは、「販売員が"水道局から来ました"といっても信用しない」「清掃後に別の高額な商品を売りつけるケースもあるので注意する」などをアドバイスしている。なお、マンションについては給水管の清掃は管理組合が管理することになっており、各家庭の判断で清掃することはできない。

いわせてんか! 使い勝手が悪く、暗く古びれた住宅が、建築家の手により近代的な明るい使い勝手のよい住宅へと劇的に生まれ変わるというようなリフォームをテーマとした番組が放映されるなど、リフォームに対する関心が高まっている。
 諸外国に比べ極端に耐用年数が短い我が国の住宅であるが、リフォームが積極的かつ適正に行われることにより平均的な耐用年数が高まることになれば、優良な資産のストックが増えるとともに、廃棄物の減少、資源保護にもつながり国民経済及び地球環境に与えるプラス要因は大きい。
 しかし市場規模の拡大と共に悪徳業者も蔓延るのが世の常であり、しかも住宅のリフォームという値段のわかりにくいものが対象であるため、そう大して高くもない原価のものを法外な価格で売りつけるという詐欺的なことが行われており、しかも狙われるのは消費者としての立場の弱い高齢者が多い。いくら自己責任の時代だとは言っても、行政は、自分の身を守ることのできないこれらの被害者に対し救済措置を講じるとともに悪徳業者に対しては罰則規定を強化する等厳しい姿勢で臨むべきである。
 また、現実にリフォームを考えている消費者も、現在はインターネット等でいくらでも自分で情報収集できる時代である。的確な情報を収集し、信頼できる相手に依頼することで、劇的なアフターを勝ち取っていただきたい。





赤れんが公会堂リニューアルオープン
  (朝日新聞H14.11.2)  
   大阪・中之島公園のシンボルになっている、大阪市中央公会堂の保存・再生工事が終わり、1日、リニューアルオープンした。大正ロマンの薫りを漂わせる赤れんがの建物は老朽化が進み、取り壊しの危機もあったが、「大阪の文化の象徴を永久に残してほしい」という市民の熱い思いが結集し、往時の華麗さをよみがえらせた。市民の文化拠点として、新世紀の新たな歴史を踏み出す。

 (橋爪伸也・大阪市立大大学院助教授の談話)
 「建物を何世代にもわたって使おうとする取り組みは、身近なところで相次いでいる。国内有数のオフィス街でもある大阪・北浜で、築70年を超す5階建ての時計店ビルが、貸しオフィスとして再出発した。京都の町家郡の中には、改修で使い勝手を良くした結果、土地・建物の値段が逆に上がった例もある。バブル崩壊後、地価下落に歯止めがかからない中で、注目すべき変化が起きている。」

中之島公会堂
<中之島公会堂>
生駒ビルヂング
<生駒ビルヂング>

いわせてんか! 「大阪の文化の象徴を永久に残してほしい」という市民の熱い思いが結集し、公会堂の保存・再生工事が実現した。
 記事によると、そもそも、大阪市が71年に市庁舎の建て替えに伴って打ち出した中之島東部再開発構想で、老朽化が進む公会堂は一時取り壊しの危機に直面していた。しかし、日本建築学会近畿支部や中之島をまもる会などが、保存を呼びかける署名活動に乗り出し、市民の間で賛同の輪が広がり、隣の府立中之島図書館の重要文化財指定もあって、公会堂の保存が決まった。朝日新聞社が呼びかけた「赤レンガ基金」からは、7億6081万2479円が寄付されたとのことである。それだけ、多くの人が、公会堂に価値を見出しているということであろう。





不動産投信が人気 〜高い利回り評価、税制改革追い風〜
  (日経 2002/11/1)  
   不動産投資信託(REIT)の人気が高まっている。長期金利が1%を割り込むなど金利低下が一段と進むなか、REITは配当利回りが5%前後に達することが評価されている。
 昨年9月以降、6本が東証に上場した。10月31日はこのうち4本の価格が上昇(11月1日には5本が上昇)。日本リテールは年初来高値を更新した。
 REIT全般に最近は値上がりが目立つ。10月に入って6本の単純平均価格は6%上昇した。
 主な買い手は個人投資家だが、相対的な魅力の高まりで、投資対象に検討する年金基金も増えている。
 課税の簡素化が進むことも追い風だ。現在は税率20%で源泉徴収したうえ、給与など他の所得と合算して総合課税するのが原則。政府は来年度の税制改革で配当課税を20%の源泉徴収に一本化する方針。申告の手間を嫌っていた投資家がREITを買い増しているという。

いわせてんか! 不動産取引を活発にする切り札として期待を集めていたが、これまで盛り上がりはいまひとつだったREIT。
 盛り上がりを欠く要因の一つは、空室率上昇や賃料下落が予想される「2003年問題」。また、投資用ワンルームマンション等の個人投資家を引きつけるライバルの存在も大きい。
 そして、配当課税の仕組みも普及の壁だ。個人の場合、1銘柄の配当が年10万円を超えると確定申告が必要になる。REITは一口50万円前後が多く(Jプライムは約20万円)、配当利回りは5%前後であるので、確定申告を避けようと思えば、4口以上は買えない。実際、個人投資家の約8割が3口までにとどまる。
 来年度の税制改革で配当課税が源泉徴収に一本化されれば、このような制約が無くなることから、個人投資家が買い増してくると考えられる。
 REITの時価総額は現在約4500億円であり、株式や債券と比べ市場規模はまだまだ小さいが、その分、将来の成長を期待したい。

 
いわせてんか! 人々の関心が不動産に少なからず向けられている証拠であり、うれしい事だ。
 しかし、株に対する投資と同様、ハイリスク・ハイリターンであることには変わりない。当然ながら、投資に際しては、十分な準備が必要である。
 こうした不動産の証券化などが十分に機能すれば、不動産取引が活性化し、不動産に対する魅力は一段と高まることにより地価下落にストップがかかり、さらに上昇局面に入ることも期待される。





モンテカルロDCF法のソフトと鑑定評価

 
いわせてんか! 先日、知り合いの鑑定士さんにお誘いを受けて、「投資用不動産のためのモンテカルロDCF法」ソフトの説明会兼懇親会に参加させていただいた。

 ソフトは主に、金融工学の分析ツールを用いて、証券化に適するような大型収益物件などの投資用不動産の収益価格や割引率の算出及び複数不動産への分散投資(不動産ポートフォリオ)効果測定などを行う。金融方面からのパラメータの豊富さもさながら、従来の鑑定のツールも組み込まれており、出力された分析結果も図表として様々に工夫されている。
 また、複雑なパラメータは「既定値」が用意されており、最新へのアップデートも予定されている。さらに、試行回数の多さ・速さが違うとのこと。実際、居酒屋の一席に置かれたノートパソコンの中で、何万回もの計算が数十秒で行われるのを見せていただいた。

 これを作られた先生は、理工学部を卒業しソフト会社で働かれた後、不動産鑑定士の資格を取得して、鑑定事務所で経験を積まれた。現在は、独立して事務所を運営される傍ら、大学の研究室で金融工学の勉強をされている。

 ソフトは、その研究の中で自然と涌き出てきた結果という。不動産鑑定は分析ツールとしての「金融工学」に不慣れであり、金融は「不動産」自体に疎い。この間を取り持つことができるのは、まさにそのような経歴を持つ人だけであり、その結果がソフトとして結実したのだろう。それが実務に益をもたらす「実学」となるためには、不動産鑑定の実体験が不可欠であったと思われる。

 鑑定の世界では、評価基準の改正の目玉として、収益還元法の一手法であるDCF法を位置付け、この精緻化は鑑定士全員の課題である。その中で、収益物件の価格の説得性や、割引率の算定根拠をより厚いものとするため、このようなソフトやその概念を理解し活用する必要があるのだろう。少なくとも私はそう感じた。

 おりしも、今“MOI(マネジメント・オブ・テクノロジー)”が注目され、工学版MBAとして、名立たる産学がプロジェクトを始動している(日経 H14.11.4)。遅れ馳せながら、日本も技術と経営を結び付けて産業界の活性化を目指す。

 その先生は言う。「『金融工学』とは広い意味での資産評価理論であり、『リスクを評価すること』であるのに、何故これを鑑定士が勉強しないのか不思議である」と。また、「『リスクを認識・評価する』ということは、不動産や鑑定士に限らず、これまでの日本全体に欠けていた知恵である。このまま何もせず、もう一度同じ間違いを犯すのは愚かだと思う」と。

 こんな時代だけに、将来を的確に“読む”ことは難しい。それゆえ、積極的に有効な新技術を取り入れ、専門家として、ニーズに合った説明責任を果たせるよう、準備を怠ってはならない。

 なお、ソフトを開発された先生の詳細は以下である。
 興味のある方は、連絡されてはいかがだろう。

 
 不動産金融工学研究所(Refe Institute)
   不動産鑑定士 小林秀二
     info@refe.co.jp

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年11月6日号・完―  
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