週刊アクセス
 
 
平成14年5月1日 第106号
 
     
  今週のヘッドライン  
 
関西の産業再生、キーワードはグローバルニッチ
 〜「関西からひとこと」 前川知史氏(大和銀総合研究所近畿経済研究部長)のコラムより
これからの梅田進出のために
阪神パーク、来年3月末に閉鎖―阪神電鉄が発表―
税務訴訟の問題点 国税職員が審判官
 
     
関西の産業再生、キーワードはグローバルニッチ
 〜「関西からひとこと」 前川知史氏(大和銀総合研究所近畿経済研究部長)のコラムより

  (日経ネット関西 H14.03.03)  
   今年の干支は、壬午(みずのえ・うま)。過去、壬午の年に起こった出来事を見ると、本能寺の変、英国ピューリタン革命、赤穂浪士の討ち入りなど、歴史的転換点を迎える事件が起こっている。まさに転換の年を予感させるが、今年は関西経済にとって、どんな年になるのだろうか。
 マクロ経済運営を見ていると、小泉内閣の支持率が急低下し、かえって構造改革のハードランディング化が進みそうな雰囲気である。大手金融機関に対する公的資金の注入と引き替えに、不良債権処理の早期実施が現実のものとなれば、関西の企業倒産が一気に増えることも懸念される。
 しかし、この難局に「いまこそ官民一体で乗り切らなければ、関西経済に明るい未来はない」との強い思いで対処すれば、厳しかったリストラの効果が必ず報われるであろう。そのときこそ、関西がいよいよ逆襲に転じる番でもある。
 関西の産業集積は、造船、電炉など重厚長大から家庭用ゲームソフト、DNAチップなど軽薄短小まで、多様性に富んでいる。人口当たりの大学数、研究者数、特許出願数などで優位性を持ち、知の創造に有利な基盤がある。また、関西人の気質には、不屈の「やらまいか」精神があり、起業家を輩出しやすい風土がある。(注=「やらまいか」とは、遠州・浜松から出た言葉で「何でもチャレンジしよう」の意味がある。関西弁では「一丁やったろう」に相当する。)  こうした、関西経済が持ち合わせているポテンシャルを活かして、関西の企業は何を目指していけばよいだろうか。そのキーワードとして「グローバルニッチ」を掲げたい。関西の企業は組織より個人の力に負うところが大きい。組織力では東京に勝てないし、東京に対抗しなければならない必然性もない。東大阪の町工場を例に取り上げるまでもなく、個々の企業が持つ技術力は卓越し、まさにグローバルな競争力を有している。それに、徹底したニッチ戦略でマーケット創造力を付ければ鬼に金棒である。
 変化の年、転換の年こそ、関西の強みを活かすチャンスでもある。関西の産業再生にとって大事なことは、多様な産業集積と起業家創造の風土を活かした「知の共創」を進めていくことであり、さらに「グローバルニッチ戦略」で身近なところから新しいマーケットを開拓していくことである。

いわせてんか! 先週、当HPの「鑑定業 守るか?攻めるか?!」と題した特集コラムにて、この激動の時代、我々鑑定士もどのような道を模索していくべきかを論じた。低迷する関西経済にエールを送る上記記事は、我々にとってみても一つの指針となりうる。
 不動産を一つの産業として捉えるならば、扱う商品はREITに組み込まれるようなAクラスビルから荒涼とした原野まで千差万別であり、必要とされる知識も法律、税務・会計、金融、建築などと多岐に渡る。様々な分野の人が不動産に携わっており、不動産を専門とする士業も数多くある。
 しかしながら、特に我々のような不動産を専門とする士業の人間にとって、あまりにも自らの専門分野に特化しすぎてしまい、ともすれば「木を見て森を見ず」的な事態になってはいないだろうか。
 我々が培ってきた知識を応用することにより、また、各々の専門知識を持った専門職業家が連携することによって、クライアントに対して「痒いところに手が届く」サービスを提供することが可能になるのではないか。この「痒いところに手が届く」サービスこそ、我々専門職業家にとっての、上記記事にいう「知の共創」であり、「グローバルニッチ戦略」である。





これからの梅田進出のために〜
  日経ネット関西版2002年4月4日  
   この春、大阪の映画館地図が塗り替わる。閉館する梅田東映会館からバトンを引き継ぐようにして、4月27日、その300メートル北に都市型シネマコンプレックス(複合映画館)が誕生。心斎橋では、パラダイスシネマが3月末に閉館し、松竹がその後の利用を検討している。変化のキーワードは「シネコンの台頭とミニシアターバブルの崩壊」だ。

 梅田ブルク7と入れ替わりに、梅田東映、パラス、パラス2の入った梅田東映会館は4月28日に閉館。43年の歴史に幕を下ろす。「直営館からシネコンへ」という東映の戦略に沿った交代劇だ。

 梅田周辺では、扇町ミュージアムスクエアも年内に閉館する。客席数60と小ぶりなが ら、若手監督の作品も多く上映してきただけに、才能の発掘の場が1つ失われる格好だ。

(大阪日刊スポーツ2002年4月29日、なにわWEB タウン情報より)

 大阪・梅田のど真ん中に、新しい名所が生まれた。阪神百貨店の南側に24日、オープンした「イーマビル」は、地下2階から地上6階まではファッション、飲食、インテリアの複合商業施設、7階から13階はティ・ジョイ、松竹共同経営のシネマコンプレックス「梅田ブルク7」が占める。

いわせてんか! 梅田地区の1人勝ちが当分続きそうな勢いである。ヨドバシカメラの開店、三越の進出決定、さらには今回の複合型商業ビル「イーマ」のオープンである。梅田界隈はより商業施設の集積が増し、集客力も増すものと予想される。さて、シネマコンプレックスついては、昨今郊外のロードサイド型とパターン化されていたが、今回のごとく超一等地というケースは珍しい。都心回帰により若干人の流が変わったとみるべきであろうか。

 特に梅田界隈のような高度商業地の複合不動産の価値は、複雑きわまりなく、流動的な将来をもふまえて査定される。混沌としたこのご時世のなかで、梅田進出等を模索されている方がいらっしゃれば、一度鑑定士としての眼と経験を、活用されてはいががでしょうか。





阪神パーク、来年3月末に閉鎖―阪神電鉄が発表―
  (日経ネット関西 H14.04.27)  
   阪神電気鉄道は26日、レジャー施設の「阪神パーク甲子園住宅遊園」(兵庫県西宮市)を2003年3月末に閉園すると発表した。赤字が続き、存続を断念した。閉鎖に伴う阪神電鉄の損失は施設撤去費用など16億円。跡地には三井不動産が商業施設を建設する。
 同園は総面積が12万5000平方メートルで、観覧車などの遊具のほか住宅展示場を併設。入園料は無料で、遊具収入と住宅会社への施設賃貸料で運営している。しかし、景気低迷で展示住宅が減少。遊具収入も低迷し、2001年度の売上高は7億3000万円、最終赤字は5億円の見込みだ。
 同園は1929年に開業した「甲子園娯楽場」が前身。ピーク時の73年度には135万人の入園者があった。阪神大震災を契機に入園者が大きく減少したため、97年に入場料を無料にし、住宅展示場も取り入れていた。

いわせてんか! 宝塚ファミリーランドに続き、阪神パークの閉鎖も決定してしまった。伝説のレオポンで注目を浴びた同パークであるが、時代の流れ(少子化やUSJの好調)や追加投資により得られる収益性(ハイリスク)を考慮すると、ファミリーランド同様、致し方ないといったころか。

 阪神パークの周辺には、全国各地で収益低迷や閉園に追い込まれている競輪場(甲子園競輪場)があり、甲子園球場とりまく不動産の価格形成要因は、将来的には大きく変化する可能性を有しているといえる。予測にはおのずと限界があるが、様々な観点から収益に結びつけるコンサル業務を手がけるのも、我々の使命である。





税務訴訟の問題点 国税職員が審判官
(日経 H14.04.27)
 
 日経「税をただす 第3部 森を見ぬプロたち 4」コラムより。

 昨年10月、納税者の立場から、その「ムラ(税の組織=財務省主計局、政府税制調査会や国税庁、税務署といった徴税の現場)」と闘おうという学会が生まれた。「租税訴訟学会」。弁護士や税理士ら130人以上が、納税者が20件に1件程度しか勝てない納税訴訟の現状を打破したいといって集まった。
 学会長の山田二郎弁護士はいう。「納税者の救済手続きとして裁判が機能していない
 学会がもっとも問題視しているのは、国税職員が裁判所に調査官として出向し、裁判を補佐していること。税務訴訟が集中する東京、大阪両地裁では、5人の国税職員が調査官をつとめている。

 裁判だけではない。そこに行く手前で納税者の救済にあたるべき国税不服審判所も、独立した第三者機関というのは名ばかりだ。審判所の総人員483人のうち、検察官や裁判官などの外部登用はわずか18人で、残り96%は国税職員が占めている。
 人事異動ひとつで、プレーヤー(国税職員)がアンパイア(審判官)になる不服審判所。納税者の主張が一部でも認められるのはわずか15%程度である。


いわせてんか!
 公然たる事実も、このように文章にしてみると重いし、伝わる。
 納税者訴訟の現実はおおむねこのとおりであり、「不服審査前置主義」により、納税者が直接裁判へいけず、「国税不服審判所」の洗礼を受けなければとりあえずの主張もできないのが事実である。ここでの事実認定・争点抽出が、後の裁判の大きな部分を占めるだけに、そのハードルは高い。

 おりしも税理士が「出廷陳述権」を得て、納税者の身近な代理人が法廷でその権利を主張することが可能になった。上記学会の活動にも注視しつつ、不合理と思われる課税処分については、大いに争って、税法適用を正しい路線に引き戻す努力が必要だろう。現に、当HPでも全部・一部勝訴を紹介している。

 もちろん、不動産の評価、特に“時価”での訴訟、その理論武装には「不動産鑑定士」との連携が欠かせない。

 なお、既報のとおり審判所のホームページがH14.4.26刷新され、過去の裁決要旨(平成8年7月1日から平成13年6月30日までは公表裁決事例全文)がWebで見ることができるようになった。キーワード検索等も可能なので、ぜひ審判所の判断先例の確認に利用していただきたい。当HPリンク集からも飛べる。

 
 
 

 ※「いわせてんか」は、(株)アクセス鑑定の統一見解ではなく、執筆担当者の私見にすぎません。

           
 
  ―平成14年5月1日号・完―  
  戻る