①令和時代を迎えて不動産の価値はどのような方向へ行くのか。

《戦後50年まで》
令和を語る前に、まず、昭和・平成の時代の「土地と人間との関係」を整理するため、戦後からバブル崩壊までの50年と、その後の価値逆転潮流時代の到来を知る必要があります。
要約すれば、1945年(終戦)から50年経た1995年までは、個人よりビジネス、消費者より生産者、生活の質より製品の質、異質性より同質性、創造性より服従、女性より男性が優先し、年功序列・終身雇用で日本の平均的な会社員の生涯ががんばれば保障された、ある意味において確実性の時代でした。
そして、不動産のうち土地については、右肩上がりで土地神話・一億総不動産屋と揶揄されるほど他の財と異なる最も安定し堅調な財として君臨してきました。


《1995年から》
一方、1995年という年は、バブル崩壊後の地価下落にあって、阪神淡路大地震という大災害、地下鉄サリン事件という人的(テロ)大量殺人事件という、それまでの日本の安心・安全神話が完全に瓦解した時代を迎えました。
以後、日本人の価値観は、ビジネスより個人、生産者より消費者、製品の質より生活の質、同質性より異質性、服従より創造性、男性より女性が優先し、土地神話から安心・安全の崩壊へ、企業奉職精神から起業家精神へ、大量一律から少量多品種へ、モノからココロへと、それまでの確実性の時代から不確実性の時代へと突入していきました。


《不動産の価値観の変遷》
不動産ビジネスの構造変化、不動産に対する価値観の変化は、このターニングポイントに前後して大きく変遷し、不動産の価値逆転時代を迎えます。
まず、不動産は特別な資産ではなくなり、投資対象として、他の金融商品と比較される財の1つとなりました。
そして、投資対象の観点から、それまでの土地重視から土地建物一体で生む収益重視となり、その結果、キャピタルゲイン重視からインカムゲイン重視、担保価値重視から投資価値重視へ、永続保有から期間保有へと需要者の経済行動が変わり、売り手が主導権を取っていた時代から買い手が主導権をとるようになってきました。
その結果、それまでの右肩上がりの地価変動は、経済変動の中に組み込まれ、地価は上下変動を繰り返すという資産となりました。
平成の時代の資産は、失われた20年と言われながらもITバブル、サブプライムローンの破綻、リーマンショック、東日本大震災、アベノミクス、インバウンド効果等、国内外の様々な要因によって、地価は、大小の波動を繰り返すことになります。


《令和における不動産の価値感》
これらの戦後の昭和、平成の時代を経て、令和の時代はどのように不動産の価値をみるべきかですが、私は、価値創造性の時代を迎えるのではないかとやや期待を込めて予測したいと思います。
キーワードは、多々考えられますが絞り込めば、少子高齢化とAI革命です。
少子高齢化は今に始まった事ではありませんし、これを簡単に止めることもできないものです。その結果、生産年齢人口(16~64歳)は減少し、人手不足が深刻化していきます。
そのため、外国人労働者を受け入れる政策を取りたいが、中々難しい問題が出てくるため、ロボットにできる事はロボットに任せ、決まりきった規則性のある業務はAI化が加速度的に進みます。
こうなると、もはや既成概念の考え方は駆逐されていきますが、AIデータを脇に携えて、人間の創造性を軸とした価値が創出されていくと思われます。
不動産は、「長期的考慮の下でその価値が発揮される」という概念は、短期的にも、中期的にもその価値が発揮される場合もあり得ることになります。
ビッグデータ(大量の事例データ)分析を駆使して、打ち出したAIによる解析を基に、その実現可能性を人が判断し、短・中・長期の不動産利用方法を決定する時代。不動産は、人の創造性の結実としての使用方法により動産か、動産に分かれていく。多様性のある財として土地は、やはり人間の手によって創造され利用されていく時代へとさらに進化していくと思われます。
不動産の価値は、時代のせいにせず、AIを通じて時代にふさわしい利用の仕方を駆使して、ある程度、少子高齢化を受け入れることで価値の創造性が発揮されていくことが令和の時代ではないでしょうか。
とくに土地は、国土を構成(法的支配)、用途的に特性をもった地域を構成(競争・協働)、地理的に世界に1つしかないところ(地理的固定・個性・多様性)であるという普遍の価値観であるとともに、時間軸による最有効使用を前提とした価値創造性を迎えるのではないでしょうか。
以上

(令和元年5月1日執筆)

2019年05月01日